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2024年 10月17日更新

自動車バッテリー充電制御について                        Copyright 東陽システム

理系、工学系の方、オームの法則が理解できる方向けの内容です。

3年落ちの中古アルトワークス(5速マニュアル)購入後5年が経過し、今まで何もしなかった
8年物のバッテリーの電解液の比重を測ったら1.20程度だったので外部充電しました。
充電後は比重があまり変化しなかったので、自作が面倒なのでKivner製のデサルフェーター
KVN-BTF12を購入、改造し約1週間、間欠動作させました。
結果はバッテリーの4セルは比重が1.25程度に改善しましたが残りの2セルは1.20程度で
効果なしの状態でした。

エンジニアとして興味があったのでバッテリー特性、充電制御、自動車のサービスマニュアルを
調べ、メーカーに問い合わせた事などを記載します。
また、自動車メーカーの設計者ではない昭和のエンジニアの私が考えた設計フローも紹介します。

環境

私の自動車(アルト)はアイドリングストップ機能なし、減速時のエネチャージなし、非ハイブリッド、
充電制御あり仕様で最近のNet通信機能などは全くありません。
20年程前に設計し現在は2代目のバッテリー端子の電圧電流温度計により走行中のバッテリーの
状態を監視しています。(写真)
電圧は配線の電圧降下が無いようにバッテリー端子の電圧を直接計測し、
電流はホール素子を使った貫通型非接触センサーを使ったもので毎秒3回計測しています。
自動車自体にはバッテリー端子に電流センサー(仕様不明)が取り付けられています。

暗電流

オプションを設置していない自動車自体の暗電流は約3.7mAでした。(他の市販車は知りません)
私の自動車にはETC、レーダー、ラジオなどあり合計で約7mAです。
ドアを開けた直後は約200mAありますが静止状態が30分程度経過すると約7mAに戻ります。
参考:自車の電気系統配線図(PDF) 運転席回りの美しくない写真
OBD端子には常時12Vが供給されており、そこにオプション機器を接続すると暗電流が増える
可能性があります。(セルスター製レーダーAR-2では18mA増えました)

バッテリーの充放電

自車の場合、
エンジン始動時は100A以上の放電になります。
オシロスコープで波形を観測すれば正確な数値が計測できますが、自動車のサービスマニュアル
によると最大370A(拘束時)ですが一瞬の事であり、面倒なので詳細な計測はやめました。
始動直後、充電電流は20A程度から10秒後には5A程度に落ち着きます。その後3分程度で
2A程度になり、更に10分程度経過すると充電と放電を繰り返す充電制御が始まります。

バッテリーの特性

温度、使用方法、経年劣化、個性などにより特性がダイナミックに変化します。
劣化の原因は過放電、過充電、水不足、サルフェーション、構造的な欠損などです。
バッテリーメーカーによると、
バッテリーの電気量は新品のバッテリーの場合は放電に対し115%の充電が必要だそうです。
1〜2A程度の過充電もバッテリーには良くないそうです。
過充電状態だと電解液が蒸発するので水量により過充電かどうかの判断が出来るそうです。

バッテリーの残存容量(Ah)は無負荷状態で充放電からある程度経過後に、端子電圧を測定する
ことである程度判断出来ます。
容量100%時13.0±0.2V、60%時12.5±0.2V、30%時12.0±0.2Vのようですが、温度等により変化し
バッテリー個性によるところが大きいです。
自動車に載せたまま、まして発電中などは電圧を測定してもバッテリー残存容量はわかりません。

バッテリーの電気量

放電した電気量を充電で補充するには電流x時間x充電効率で計算できます。
(充電効率:放電効率も有りますが充電効率と表記します)
例えば、
始動時の放電100Aが1秒間とすると電気量は100Ax1sec=100Asec
充電5Aを20秒間すると5Ax20sec=100Asec
となり充電効率115%を考慮すると23秒充電すれば電気量は元に戻ります。
-->エンジンスタート後1分も運転すればバッテリーは元に戻ります。(私の自動車アルトの場合)

しかし、
暗電流が10mAで1週間走行しない(静止状態)と10mAx24時間x7日=1.68Ahの放電量になります。
この1.68Ahを充電するには充電効率も考慮し充電電流が5Aとすると
1.68Ah/5A=0.336時間(20分)以上走行する必要があります。
Netの記事では
週一の買い物でチョイ乗りの場合はバッテリーが上がるなど有りますが計算すれば納得出来ます。
暗電流が10mAで計算しましたが多い自動車では50mAとかの記事も見受けられますが、この場合
1日分の電気量は50mAx24時間=1.2Ahで
40Ahのバッテリーなら33日(40/1.2)で電気を使い切ってしまう事になります。
これらの計算から暗電流がバッテリーにとって重要なファクターと推察されます。
私の設計した車載機器の暗電流は0.1mA程度に抑えています。

一般の機器メーカーに言いたい、
ラジオの選局データなどは揮発性メモリーに記憶しているのでバッテリーよりの常時通電が必要に
なり暗電流が増える原因です。なぜ不揮発性メモリーにしないのが不思議でなりません。
時計にしても時刻計数回路の消費電流は10uAオーダーなので回路を工夫して暗電流を下げる努力を
行って貰いたいです。

発電制御

発電機(オルタネーター)出力とバッテリー端子は常に接続されていてバッテリー端子の電圧は
発電中は発電機の電圧で
発電停止中はバッテリーの電圧です。
発電機のローターコイルに流す電流により発電電圧を制御しています。
コイル電流を増やせば発電電圧は上昇し、コイル電流をゼロにすれば発電停止し、エンジン負荷は
低減し燃費向上になります。
ブレーキランプ点灯時など突然の電流増加時は発電が追いつかず一時的にバッテリーから
電流供給が行われ一時的に電圧が低下しますが、バッテリー電流値か、ブレーキスイッチの状態
若しくは電圧値などから制御回路が判断しコイル電流を増加させ元の状態に戻ります。

私の考えた自車充電制御フロー

バッテリーの基本制御で実際には様々な情報を考慮する必要がありますが、
実際の自動車も多分このような処理を行っているのではと推察します。

(01) エンジン停止中(長期駐車中)は、
1時間おきに放電電流(暗電流)を測定し放電電流量を累積
バッテリー交換(リセット)後の経過時間を計算
ドア開閉など平均の暗電流以上を検出したら常時、放電電流量を累積
(02) エンジン停止中でイグニッションON、ACC ON時は放電電流量を累積
(03) エンジン始動時、
セルモーター回転時間を計測し、セルモーター動作中の放電電流は
計測出来ないので推測値から放電電流量を累積
(04) 環境温度、バッテリーの寿命特性、経過時間、放電電流量などから
充電効率(例;1年までなら115%,2年までなら120%・・・)を計算
(05) 上記放電電流量、充電効率から必要充電電流量を計算
(06) 発電開始からの経過時間計測
(07) バッテリー電圧が発電最大電圧(例;14.5V)になるように発電機を制御
(08) 発電開始から10秒経過まで待つ
(充電開始時には一気に充電し、この間も充電電流量を累積)
(09) 充電電流を通常充電電流値(例;2A)になるように発電機電圧を制御
(10) 充電電流累積が必要充電電流に満たない場合は(09)へ
(11) 充電電流累積、放電電流累積、必要充電電流量をリセット
-->この時点で満充電
(12) 発電機を停止し、放電電流量の累積
放電電流累積が既定値(例;100Asec)になるまで待つ
(13) 発電機を動作し、充電電流の累積
充電電流累積が充電効率を加味した必要充電電流量(例;115Asec)
になったら(11)へ
   
(12)(13)にてヘッドライト、エアコンファン、ラジエーターファンなど
大電流機器が動作している場合は発電機を停止せず充電電流が
ゼロになるように発電機を制御


Kivner製KVN-BTF12について

消費電流が大きいのでLEDを消灯しました。
低電圧検出回路?のパターンが間違っていました。(FETのD,Sが逆)
外付けスイッチでON-AUTO-OFF機能を追加しました。
ON:常時動作
AUTO:電圧により自動ON/OFF動作
OFF:停止

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